タイトルの通り、私は6月〜7月にかけてマッチングアプリを利用していた。
私はアロマンティック・アセクシャル(Aro/Ace)を自認しているが、定期的にこの自認が不安になってしまう時期がある。
恋愛感情、性的欲求が「無い」という証明はほぼ不可能であると言える。
「ほら無かったでしょ?」と言えるとすれば、それは人生が終わるときだろう。
わかりやすい指標がないAro/Aceを、他の当事者の人はどうかはわからないが、私は「恋愛感情や性的欲求を理解できない」という感情から自認するに至った。
でも不安になるのが、「知ろうとしなかったから理解できないだけでは?」と自問してしまうときだ。
その度に「そんなことはない。Aro/Aceという言葉が私は一番しっくりきている」と不安を振り払うのだが、今回は思い詰めてしまい、「それならば確かめてみよう」とマッチングアプリを始めたのだった。
アプリを始める
利用者が最初に当たる難関がプロフィール作成だろう。
面倒くさがり屋の私は、当然かのようにテンプレートをそのまま使って自分のプロフィールをサクッと作った。
利用を始めると、無数の男性の写真が出てきて、「まずは誰かいいねをしろ」と言わんばかりだった。
いいねと思う人がいない。。。
つか、この画面の中だけの情報でどういいねと思えばいいのだろうか?
こんな心の声を漏らしながら、でもいいねをしないと始まらない。そう自分に言い聞かせて、アプリがおすすめする人のプロフィールを読んでいった。
そこで、ある一人の男性のプロフィール欄に私は感銘を受けた。
そのプロフィール文は、整然としながらも愛嬌を感じ、読み手に簡潔に自分という人間を伝えていたのだ。
私のプロフィールもこんな風にしてみよう。
私は自分のプロフィール文を一から作成し直した。
読みやすく、簡潔に、かつ自分を隠さず表現する。
この作業がとても楽しく、ついつい没頭してしまった。
できあがったプロフィール文は、自画自賛できるくらいの出来だった。
このままこれを履歴書にしてしまいたいくらい。
正直、このプロフィール文を作成できたことで、私はある種の達成感を味わっていた。
当初の目的である「恋愛感情を知る」は忘れかけていた。
マッチング
プロフィール欄を充実させたことで、私は自分からいいねしなくてもいいねをもらえるようになった。
いいねをもらうと、ありがとうを返すことでマッチング成立となるそうだが、この「マッチング成立」という言葉が違和感に感じ、私はなかなかありがとうを返せずにいた。
そんな中、一人の男性からいいねを受けたとき、そのプロフィール文に清潔感を感じて私は初めてのありがとうを返した。
すぐにメッセージが届き、その男性とやり取りをするようになった。
価値観が似ていたので、メッセージは2週間くらい続いた。
男性側から「会いませんか」と誘いを受け、私は承諾した。
実際に会う
※あまり具体的な内容は書きません※
対面で会って話をしていても、メッセージでやりとりをした延長のように会話が続けられ、似た価値観を持った人なんだろうなと思うことができた。
1回目に会った後も、メッセージは続けていた。
価値観が似ている男女が出逢えば、それは恋愛に発展するのが、ドラマや映画のお決まりパターンだが、私はこの男性に恋愛感情を抱けず、ただ楽しい会話が続けられる相手という関係性に感じていた。
この数週間後、2回目の会う約束をした。
やはり会話は楽しかったが、1回目より距離を縮めようとされていることを感じた。
そして、趣味や日常生活の話だったのが、より具体的な未来を連想させるような会話になっていると感じたとき、私は「あ、恋愛は無理だ」とその人に心のシャッターを下ろしてしまった。
この時、相手の中で、私と時間を共有し合う未来という選択肢ができたのだと気付いた。私は、相手のことを話が合う人とは思えたけど、これからも時間を共有し合えるかと聞かればそれはノーである。
これが恋愛なんだと分かった瞬間であり、私に恋愛はできないと気付いた瞬間だった。
私の答え
相手はきっと私に対して好感を持ってくれていた。
ありがたいことなのに、私は相手の感情を理解することができなかった。
私が相手に感じていたのは「会話がテンポよく続けられる相手」という印象で、それ以外の何物でもなかったのだ。
相手が私に感じている好意に嫌悪感すら感じるようになり、同じ感情を私は相手に返すことはできないと痛感した。
これが「恋愛感情を抱かない」という気持ちで、その証明が出来た気がした。
恋愛感情が「無い」のではなく、恋愛感情を抱かない感情が「ある」のだ。
私がマッチングアプリを経て出した結論である。
その後、相手にメッセージでお断りの連絡を入れ、アプリを消した。
罪悪感は数日続いた。
それから
アプリを消してから、私はまた「恋愛の存在しない世界」をひとりで生きている。
やはり私にとって恋愛はファンタジーだ。
この経験を経て「まだ恋愛したことないから知らないだけでは?」と自問することはもう無いだろう。
自分に箔が付いたようで、少しうれしくなった。
実験的な理由でアプリを始めたことに、まだ少し、相手への罪悪感は残っている。
だけどこれも私がAro/Aceである証として、この罪悪感も胸に刻んで生きていこうと思う。
Aro/Aceのシンボルである、ブラックリング、ホワイトリングをネットで調べながら、私は自分が求める幸せの形を探っている。